【骨董品・古美術】様々な釉薬や陶磁器の種類

当店は中国宋代や朝鮮半島の高麗時代を中心としているため青磁の取り扱いが多く占めますが、中国、朝鮮半島共に青磁以外にも魅力的な陶磁器は沢山ございます。
歴史を彩ったものから知る人ぞ知る陶磁器までおすすめをご紹介いたします。

 

青磁

青磁は中国で誕生した陶磁器で青緑色の美しい発色と釉薬の貫入(ひび)が特徴です。


<中国・南宋官窯の青磁>


青磁釉は植物灰を主原料にし、わずかな酸化第二鉄を含みます。
焼成時に酸素が少ない状態で焼成すると、この酸化第二鉄が青〜緑色をした透明なガラスとなります。
ガラス質のため、冷えた時に土との収縮率の差で貫入が起こります。
時代や地域により釉薬や窯の条件が違うため、青みが強いものから緑が強いものまで様々な青磁色を楽しむことができます。
また、酸化焼成することで黄色に発色する米色青磁はとても希少で価値の高い陶磁器です。
青磁について詳しくはこちらにまとめております。
陶磁器の青磁とは。中国青磁と高麗青磁の特徴や違い

 

鉄釉

鉄分を呈色剤とする釉薬のことをいいます。長石に酸化鉄または酸化マンガンを加えることが一般的です。
(広義で言うと青磁釉も鉄釉となりますが、こちらには含みません。)

高麗の鉄釉
<高麗の黒〜茶褐色に発色した鉄釉>


鉄釉は種類が多く、含まれている鉄分によって黒色、茶色、黒褐色、茶褐色、柿色などの色に変化をします。
基本的には含む鉄が多いほど黒く発色します。

 

天目釉(てんもくゆう)

有名な天目茶碗も鉄釉を用いております。模様の浮かび上がる油滴や禾目などが鉄釉に含まれる成分が分離したことによる模様です。

天目釉薬を用いた茶碗
<天目茶碗も鉄釉の一種>


天目茶碗について詳しくはこちらにまとめております。
天目茶碗とは?特徴や価値

 

黒高麗

高麗時代に焼かれた黒高麗にも鉄釉が使われ、黒〜濃い茶色の発色を呈した陶磁器が存在します。

黒高麗の梅瓶
<黒高麗はその名の通り真っ黒>

 

柿釉(かきゆう)

鉄釉の一種であり明るい茶色の発色をする釉薬です。益子焼などで用いられていました。

 

褐釉(かつゆう)

中国の漢時代に作られた低火度の鉛釉です。褐色になることからこう呼ばれます。

黒釉

特に黒く発色した鉄釉のことをこのように呼ぶこともございますが、鉄釉とほぼ同義語です。

 

白磁

白磁とは白素地に透明または、半透明の釉薬を掛けた白い陶磁器を指します。
白色の陶土に鉄分のない植物灰とカオリンを主成分とした釉薬を掛け高温の還元焼成をします。

明朝の白磁
<中国・明朝の白磁>


また、昔の陶磁器では土が純白でないことも珍しくなく、白泥で化粧をして透明釉をかけたものや、乳白色釉薬をかけて白くしたものも白磁と呼ばれます。
中国初期の白磁はやや青みがかったものや、朝鮮半島の灰色の胎土を生かした李朝白磁など、白磁は純白だけでなく様々な魅力がございます。
特に元代から清代まで長く栄えた中国景徳鎮白磁は人気が高く、その名は陶磁器に詳しくない人でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
白磁について詳しくはこちらにまとめております。
陶磁器の白磁とは。景徳鎮白磁、李朝白磁、日本の白磁の特徴や違い

 

青花(染付)

青花、染付は白色の素地に呉須や酸化コバルトといった顔料で模様を絵付し、その上に透明釉をかけて高温焼成した陶磁器です。

元朝に確立された青花
<中国に始まった青磁はとても華美な模様>


透明釉の下に発色層がある釉下彩の技法の一つです。
模様は焼成することで青〜藍色に発色をします。
その姿から中国語では青花(せいか)と呼ばれ、海外でも「Blue and White」として高い人気を誇ります。

 

景徳鎮の青花

青花は元代に景徳鎮で始まり、明〜清の時代に最高潮を迎えます。

景徳鎮の青花
<景徳鎮の青花>


中国の青花は素焼きをしていない素地に呉須で図柄を描き、透明釉を掛ける生掛けという技法が用いられます。
図柄は山川や鳳凰、花草などさまざまであり、器面いっぱいに描かれるのが一般的です。

 

朝鮮半島の青花

朝鮮半島でも李朝の17世紀ごろに白磁の制作とともに青花も焼かれるようになります。

朝鮮半島の青花
<朝鮮半島・李朝の青花>


中国のものと比べ、図柄がシンプルで余白が多く取られるのが特徴です。
これは顔料の呉須を多く輸入できなかったことが原因です。
また、中国のものに比べ、図柄も様々です。

日本の染付

日本では伊万里焼などで染付の技法を用いた陶磁器があります。
シンプルな青白の陶磁器は1600年代に生まれた伊万里でも最も古い歴史を持ちます。
初期伊万里を除き、素地を素焼きしてから呉須で図柄を描き上から透明釉をかけ、本焼成するのが特徴です。
伊万里には山水画など素朴な図柄が多く描かれます。

鉄絵

鉄絵は青花に似た釉下彩で、呉須やコバルトの代わりに、酸化鉄の絵の具を用いて図柄を描きます。
その模様は鉄分の含有量や炎の性質により、黒、茶褐色、黄褐色など様々な色に発色します。
鉄分を含む顔料は広い地域で入手しやすく、普遍的な絵付技法として使われました。
青花に比べ緻密な描写は見られませんが、力強い筆遣いや、民窯ならではのユーモアのある図柄には多くの愛好家がおります。

中国の鉄絵

中国では宋代から元代にかけて、民窯であった磁州窯において用いられ、日用品の皿や瓶、置物まで様々な優れた陶磁器が作られました。

磁州窯の鉄絵置物
<磁州窯の置物に模様付けされた鉄絵>


器面いっぱいに模様を描くものから、器胎の形に合わせて色付けするものまで幅広く用いられています。

朝鮮半島の鉄絵

鉄絵は朝鮮半島にも伝えられます。高麗時代には青磁に鉄絵を描いたものが作られます。
最も鉄絵が注目されたのは李氏朝鮮時代の粉青沙器で、日本でも人気の高い鶏龍山も鉄絵の一つです。
また、白磁が作られるようになると、呉須が入手しにくかったため青花と並んで鉄絵が模様を描くのに使われます。

李朝の鉄絵
<李朝白磁の鉄絵>


李朝の鉄絵は草花から愛らしい魚文など幅広い模様が魅力的です。

日本の鉄絵

日本では銹絵(さびえ)と呼ばれ志野や織部に用いられます。
山水や草花、兎などの図柄が描かれます。

三彩

三彩(さんさい)とは陶磁器に2種以上の色釉を染め分けた陶磁器のことを指します。
色釉は低火度で焼ける鉛釉を主に使用し、鉄呈色で褐釉、銅呈色で緑釉、コバルト呈色で藍釉となり、呈色剤のないと透明釉となります。
中国で主に作られた陶磁器で、唐代にクリーム色、緑、茶褐色の3色の「唐三彩(とうさんさい)」が作られます。
唐三彩は主に副葬品であり、その形は日用品から人物、動物まで様々でした。
以降、三彩は中国で作られ続け宋三彩、遼三彩、元三彩、明三彩、法花(ファーホワ)などがございます。

宋三彩の大皿
<宋三彩は藍色も使用される>

練上・絞胎

日本においての知名度はとても低いですが、練上(ねりあげ)と呼ばれる技法で作られた陶磁器がございます。
中国や朝鮮では絞胎(こうたい)と呼ばれます。
練り上げは異なる多種の土を混ぜ、上から透明に近い釉をかけて焼き上げることで、大理石のような姿になります。
始まりは8世紀、中国の唐時代と呼ばれ、白い土と茶褐色の2種の土を混ぜ黄釉を掛けて焼き上げておりました。
その後宋代になると白色に近い2種類の土を混ぜて作るようになります。
朝鮮半島でも高麗時代に絞胎が焼かれており、こちらは3種類の土を混ぜておりました。

朝鮮半島の絞胎
<朝鮮半島の絞胎(練上)>


青磁土、白土、赫土を使用することで、白、灰色、黒がはっきりと分かれ、透明に近い青磁釉をかけることでより大理調の美しい陶磁器となります。

練上は多種の土を混ぜるため、収縮率の違いからやや脆く、焼成時や焼成後に破損することが多いため遺例が少なく、希少性の高い陶磁器となります。

黄釉

黄釉(おうゆう)とはその名の通り、黄色に発色をする釉薬を用いた陶磁器です。
中国の清代の官窯にて新たに開発された釉薬でアンチモンを呈色剤とし、とても鮮やかな明るい黄色に発色します。
ただ、黄釉も定義が広く、上記のような成分でなくても黄色に発色しているものを黄釉ということもございます。
実際には古瀬戸の黄色味がかった灰釉を黄釉とすることや、宋代の青磁を作る過程で酸化焼成することで黄色く発色をしたものも黄釉と呼ぶことがございます。

宋代の黄釉
<宋代の黄釉瓶>


黄釉は清代の鮮やかなものを探しているのか、黄色みがかった釉薬のものが欲しいのかを大きく異なってきます。

窯変釉

窯変釉は焼成時に釉薬が変化する現象(窯変現象)がおきることで多種多様な色を出す釉薬のことであり、成分は定まっておりません。

中国の窯変釉
<中国清朝の窯変釉>


ただ、現在の中国の骨董界においては、写真のような清代で作られた小豆色と紫色の釉薬のものを窯変釉といい、近年中国本国の骨董市場で取引がされるようになりました。
日本ではほとんど認識がされておらず当店でも1点しか保有しておりません。
気になる方は中国の美術品オークションなどを覗いてみてください。

 

さまざまな骨董品を探すなら当店で

当店「燦禾」では青磁、白磁を初めとしたさまざまな陶磁器を取り揃えています。
中国は青磁を中心に天目茶碗を朝鮮では青磁象嵌から絞胎、粉青沙器までございます。
是非、一度当店のコレクションをご覧ください。あなたにとって最高の一品が見つかりますように。