陶磁器の青磁とは。中国青磁と高麗青磁の特徴や違い

日本でも人気の高い陶磁器に青磁がございます。このルーツは中国にあり、発祥は紀元前の14世紀まで遡ります。
鮮やかな青緑色で貫入が美しい青磁について解説をいたします。

 

青磁の誕生と発展

青磁は中国で誕生し発展した陶磁器で、紀元前14世紀ごろ殷時代に製造されていた陶磁器が起源とされています。
植物の灰を使用した灰釉(かいゆう)が用いられ、まだ未完成の窯であったため、酸化焼成ぎみで色は鈍い草色でした。この頃の青磁は後に「原始青磁」や「初期青磁」と呼ばれます。
時代の流れとともに、釉薬や窯の技術が発展し、後漢〜西普の時代(1世紀~3世紀)には青く発色する青磁の原型が出来上がります。

唐代末期(9世紀)ごろには越州窯の青磁が台頭し、オリーブ色の美しい青磁は「秘色」として人気を博します。

越州窯のオリーブ色の青磁
<唐代越州窯の秘色青磁 出典:陶磁オンライン美術館


世界に影響を与えた最初の青磁と言っても過言ではなく、越州窯の青磁は世界中に輸出がされます。
平安時代に日本に伝わり、その美しさは猿投窯で模倣され、茶碗や瓶などが多く作られ今でも美術館に残ります。
また、朝鮮半島にも伝わり青磁が焼かれ始めるきっかけとなります。
独自の文化を用いた美しい高麗青磁の生まれたのも越州窯の青磁があったからと言えます。


中国宋代に生まれる青磁

中国の宋代には最も活発に青磁が作られるようになり、地方や窯によって様々な特徴をもった青磁が生まれます。

北宋時代には少しくすんだ水色の「雨過天青」ともよばれる「汝窯(じょよう)」や、青磁でありながら白色の発色をする幻の「哥窯(かよう)」、彫り模様(刻花)の「耀州窯」といった多種多様な美しい青磁が中国で人気を博します。

汝窯の雨下天晴色の青磁
<汝窯の雨下天晴色の青磁 出典:陶磁オンライン美術館


南宋時代には「官窯」では宮廷御用達の窯で多くの青磁が生まれており、その作陶技術の精巧さと美しく割れた貫入は目を見張るものがありました。

南宋官窯の青磁
<南宋官窯の青磁>



他にも南宋時代には砧青磁などの明るく淡い青磁が人気の高い「龍泉窯(りゅうせんよう)」なども人気が高く、鎌倉時代〜安土桃山時代には日本にも渡り多くの茶人や武家、文化人に愛されておりました。

南宋龍泉窯青磁
<龍泉窯の青磁>



中国では宋代が一番青磁が隆盛し、その後は白磁にうってかわることになります。

 

 

朝鮮半島で独自に発展した高麗青磁

朝鮮半島では10世紀前半に越州窯や餞州窯から青磁が伝わり焼きはじめられます。
12世紀ごろには粉青色の陶器が生産できるようになり「翡色(ひそく)」と呼ばれます。
中国・宋の耀州窯や定窯に影響を受け、「刻花(こくか)」や「透彫(すかしぼり)」といった彫り模様をつけた高麗青磁に力が注がれます。

高麗の透彫の青磁
<高麗の刻花・透彫の青磁>


しかし、高麗青磁で一番特徴的なのは「象嵌(ぞうがん)」です。
象嵌とは素地土を道具を用いて模様を彫り、そこに白、黒、赤といった違う色の土を埋め、透明釉を掛けることでくっきとした模様を描く技法です。

高麗の象嵌の青磁
<高麗の透彫の青磁>

 

これは朝鮮半島で独自に発展した青磁となり日本でも大変人気が高く、模様は白のみより、白と黒の象嵌のものが価値が高く、更には赤を使ったものは貴重な顔料の辰砂(胴)を用いているのでより価値が高まります。

 

 

日本に伝わった青磁

日本では越州窯の青磁が平安時代に伝わり、現在の愛知県名古屋市東部〜豊田市にあった猿投窯で模倣がされます。

朝鮮半島から伝えられた須恵器の技術を持って、中国の青磁の国産化を図るために猿投窯は高火度焼成可能な窯を作られたと考えられます。
猿投窯の青磁は青磁とは言われず、灰釉、灰釉(かいゆう)、緑釉と言われます。
越州窯を参考にしており、見込みに刻花で花文が刻まれるものが多いのが特徴です。
猿投窯で作られた青磁は中国や朝鮮ほど鮮やかな発色をしておらず、釉薬が薄くガラス質も薄いため貫入がほとんどございません。
この後、日本ではあまり青磁が発展せず、ほとんどが中国からの舶来品に頼ることとなります。
日本に中国の青磁が多いのはこうした理由によるものです。
江戸時代になると独自に青磁が発展し鍋島焼(なべしまやき)や三田焼(さんだやき)が焼かれはじめます。
鍋島青磁は特徴的で、「青磁染付」「青磁色絵」のように青磁を染付や色絵と併用したものも多い。

 

 

青磁の作り方と特徴

青磁は青や青緑色の美しい発色と、釉薬の貫入(ひび)が特徴です。
美しい青磁釉は植物灰を主原料にし、僅かに酸化第二鉄が含まれます。
この酸化第二鉄を還元焼成することで鉄が青〜緑色をした透明なガラスになります。

緑青色の青磁の釉調
<緑青色の青磁の釉調>
越州窯の黄色味がかった青磁
<越州窯初期はこのような黄色みがかった青磁もある>

焼成中の酸素の量と釉薬中の鉄の量で、黄色がかった緑から水色まで大きく発色が変化します。
※還元焼成・・・酸素のない状態や焼成すること


また、釉薬に含まれる珪酸が多いと強い青みがでて、石灰が多いとオリーブ色のような緑にもなります。
更には胎土は地方によって違い、白色〜茶褐色まで様々で、胎土に含まれる鉄分が青磁の発色に影響することもございます。
このように釉薬の成分、土の成分、窯の状態によって様々に変化するのが面白くも難しいところです。

青磁の特徴としてもう一つ、「貫入(かんにゅう)」がございます。
焼成時に土は水分を奪われるため縮み釉薬との収縮率に差がでます。冷えた時に表面の釉薬がひび割れ、「貫入」ができます。

青磁の貫入
<青磁釉薬のひび割れ、貫入>


また、古陶磁については長い時間をかけて貫入が入ることもございます。
貫入は細かく入るものや、大きく入るものなど様々であり、これは釉薬の成分や釉薬の厚みにより変わり
越州窯や汝窯は細かく、哥窯や官窯は大きな貫入であるなど窯によってある程度の区別が可能です。
この偶発的な美しいひびの模様が単色である青磁に奥行きをもたらし、青磁の鑑賞の楽しみの一つとなっています。

青磁をお探しなら燦禾で

当店は中国の古陶磁の美品を数多く取り揃えております。青磁は特に得意としているカテゴリーで、宋代の宋代から清朝の青磁や、高麗青磁など数多く取り揃えております。ぜひ当店の品をコレクションにお加えいただければ幸いです。