陶磁器の骨董品が偽物か本物かの見分け方とは?鑑定のコツを教えます。
当店は中国・朝鮮半島を中心とした骨董屋です。
商品を購入される際によくご質問されることとして
「買おうとしている商品が本物なのか心配」
「贋作を所有しているとしたら恥ずかしい」
というようなお声を多くいただきます。
せっかく購入するのであれば本物を購入したいというのは当然です。
そして、数ある骨董品の中から本物を探し当てるのも楽しみの一つです。
しかし、結論から言うと100%本物と言えるものはこの世に一つとしてありませんし、鑑定のプロでも解りません。
そんな中からできる限り陶磁器の骨董品の本物を見分ける方法、本物を売っている骨董屋を探すコツをお教えいたします。
偽物(贋作)とは何を指すか
特に偽物が出回りやすいのは中国や朝鮮の骨董品です。
偽物といっても2種類ございます。
一つは「騙す目的で偽物を作っている物」です。
これは中国では政府の許可を得ていれば偽物を製作・販売しても問題ないため、製造をしている地域がございます。
要は現代の偽物です。優しい人は現代のコピー品と謳って販売してくれますが、悪い人だとそれを骨董品として販売をします。
これは日本も例外でなく、贋作を意図して販売していたという証明ができない限り、罪には問えません。
また、骨董屋が本物と思って仕入れてきたものが実は贋作だったこと、要は偽物と知らずに販売していたというケースもあります。
もう一つは「古い物であるが時代や地域が違う物」です。
例えば宋代の青磁窯であった龍泉窯(りゅうせんよう)は南宋時代(1127 - 1279年)に栄え、明時代を経て、清時代初期(1368年~1644年)頃までの500年近く続きます。
これだけ長い時代であれば体制や流行の変化に伴い色や形などの変化がありますが、鑑定のプロであっても違えることはあり、南宋時代と判断をしたが、実際には明時代のものであったということもございます。
これは買った側は”南宋の”龍泉窯を買ったつもりだったので、明であれば偽物だったと感じるわけです。
そもそも鑑定とは何をすることか
鑑定とは「本物(とされるもの)」と比べて判断する行為です。
この世の中で陶磁器の本物や本物に限りなく近いものが存在します。
その代表的なものをいくつか挙げます。
1.日本や世界中の美術館・博物館に収蔵されている品
2.然るべき形で人の手を渡って伝来したもの
3.科学的分析がされデータ上の本物とされるもの
このあたりがひとまず、本物と言っても良いものとなります。
ではどのあたりを見て判断をしていくのが良いのでしょうか。
骨董品の見分け方1:年代にあった土や釉薬かどうか
一般的に骨董品は古ければ古いほど価値が高くなります。もちろん、現存数など様々な要因はありますが、希少性のある骨董品は価値が高く、それは古いものに多いです。
土を見る
骨董品を鑑定する人が必ず見る場所は高台(底)です。
この1番の理由は「土」を見ています。
ほとんどの陶磁器は窯と設置する箇所は釉薬を施さず土が露胎しています。
中国や朝鮮半島、日本など数百年も前の陶磁器は、大量の土の運搬技術がなく、その窯の周りから採れる土で陶磁器を作るのが当たり前でした。
そのため、まずその地域で採れる土で作られたものかで判断をいたします。
例えば、有名な南宋の天目茶碗が作られた建窯の土は鉄分を含む赤土と粘土を混ぜたものであり、そのほとんどがねっとりとしたやや赤い黒〜黒色です。
これは多くの美術館に収蔵されている天目茶碗を見てもらうとわかります。
似たものでもこの土が白く乾いたものだと、地域が違うか、時代が近代の品の可能性が高くなります。
明治時代以降には土の運搬は当たり前となり、土は様々なものになりますが、逆に有名なものは作風に合わせた土を仕入れていましたので同様に判断ができます。
このように土は判断としてとても大切な要素です。
釉薬を見る
釉薬もその時代の判断をする材料となります。
一番分かりやすいのは色で、例えば中国の青磁でも時代や窯(地域)によって様々です。
汝窯であれば水色に近くガラス質が少ない釉薬、南宋官窯はやや灰色がかりガラス質が多い釉薬など違いがございます。
龍泉窯であっても時代により色の変化をし、初期は水色の強かったが、やがて緑青色に変化していきます。
もちろん当時の作陶技術は窯の温度や釉薬の調合などにばらつきはあったため、そんなに単純な話ではございません。
しかしながら、一つの目安としてみていただき、その時代の釉薬の特徴を調べて、考えにくい釉薬のものは注意をしましょう。
骨董品の見分け方2:その時代、地域の器形や技術をしているか判断する
その時代や地域ごとに陶磁器にはある程度の流行があり、それは器形にも現れます。
あまりにも例がない形状のものは注意が必要です。
人気のある中国の天目茶碗も大量生産品であり、ある程度大きさなどの規格が決まっているため、そこから逸脱しているものは警戒してもよいでしょう。
また、この形状は高台や口縁部といった細かいところにも現れます。
高台であれば高台の厚みや、支持具の有無などが判断の材料となります。
例えば南宋官窯の高台は細く、明朝や清代の青磁になると太くなる傾向がございます。
朝鮮半島であれば石高台、砂高台などを使用しているかといったのも見るべき点です。
骨董品の見分け方3:窯の落款や作者のサインを見る
本物と偽物を見分ける判断材料で他には、製作窯や製作者の証明となる落款(刻印)やサインも判断基準になります。
特に近代日本の陶磁器は個々の作家が作ったものに価値があり「作家物」として人気がございます。
これの判断となるのが作家自身のサインや落款で重要度が高くなります。
また、中国や朝鮮半島であると良い窯で焼かれた陶磁器に落款が押されることがあります。
これらの国の古陶磁はどの窯で焼かれたかが重要になり、個々の陶工に対する価値はなく、サインなどはございません。
サインは読める必要はなく、そのサインの形で本物か判断するものとなりますので、底面や側面、共箱にないか探してみて下さい。
しかし、本物に似せたサインを入れるということは難しくありませんので、それだけで判断するのは注意が必要です。
骨董品の見分け方4:陶磁器の状態を見る
骨董品は長くの時間を過ごし、いくらガラス質の釉薬であっても、カセ(光沢の劣化)や色褪せ、土の浮き出しなどがおこります。
購入しようとしているものが経っている年数を考えて状態を見ましょう。
こうしたものが全く起きておらず、光沢などが十分にありすぎるものは、偽物や贋作として現代に作られたものが高くなります。
上の写真は現代の中国の贋作ですが、当店では研究のために購入しています。
真贋の判定として、あえて現代の贋作を見ておくこともとても重要です。
美品でなくても発掘品で土の付着や劣化があった方が本物という可能性も十分にあり得るのです。
極論は科学鑑定
陶磁器が本物かどうかを見比べるものとして究極なのは科学鑑定です。
科学鑑定は蛍光X線により成分分析を行い、使われている土や釉薬が当時のものと一致をするかを見ることができます。
また電子顕微鏡により土や釉薬の状態を見ることができます。
これによりほぼ確定的に陶磁器の正体を調べることができますが、科学鑑定は1回につき10〜100万円程度かかるので骨董店がそれをしてくれることはまずございません。
まとめ:本物と見比べよう
骨董品の見分け方についてお伝えしました。
本物と偽物の判断はとても難しく、ただその品物だけを見ていても判断はできません。
重要なのは「本物と見比べること」です。
本物としておすすめなのはやはり美術館の陶磁器であり、私どももまずはこれらと比較いたします。
最近は美術館がホームページにて陶磁器を公開しておりますので、是非ご覧になってください。
また、そういったものがまとめられている本であると高台や釉調の写真も載っているためおすすめです。
美術館より閲覧性が高く、簡単に調べられるので好きなジャンルのものは用意をしておくと良いでしょう。
そしてこれはまだほとんどの骨董屋が行っていない裏技ですが、海外の美術品のオークションを覗いてみるのもおすすめです。
正直、海外では自国の骨董品に対する研究は日本より遥かに進んでおり、日本ではまだ認知されていないものが高値で取引されています。
そういったものをいち早く調べ、骨董品を探してみるのも良いと思います。
当店はオンラインの骨董屋でございますが、このような鑑定を経て、理論づけた元で本物と考えられる商品を販売しております。
是非、一度覗いていただき、本物かどうか見比べてみてください。